病気について

多発性硬化症

(MS:Multiple Sclerosis)

免疫系の異常により、自分の細胞を間違って攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつです。
主に脳や脊髄、視神経などに炎症が生じ、中枢神経系の組織が障害される病気です。発症に関わる自己抗体は発見されていません。

疫学(日本)

  • 患者数約17,600人 1
  • 有病率14.3人/10万人 2
  • 発症年齢30歳前後 1
  • 男女比1:2~3 1

原因(病態)

免疫系の異常により、中枢神経系のニューロン(神経細胞)の軸索を覆うミエリン髄鞘(ずいしょう) が攻撃を受けて脱落(脱髄(だつずい) )し、神経活動における情報がスムーズに伝わらなくなる病気です(図1)。
MS特有の自己抗体は見つかっていません。

図1: MSの原因(イメージ図)

MSの原因(イメージ図)

中枢神経系:脳、脊髄からなり、全身の神経ネットワークの司令塔としての働きを担っています。

軸索:神経の情報を伝える電線のようなものです。

ミエリン:軸索を守る“電線のカバー”のようなものです。ミエリンが脱落すると、軸索がむき出しになり、情報がうまく伝わらなくなります。

症状

中枢神経系で、ミエリンが脱落した部位や程度によって、あらわれる神経症状はさまざまであり、症状のタイプや程度も一人ひとり異なります(図2)。

図2: MSの症状の特徴 1 2

MSの症状の特徴

見た目ではわからない症状も多く、人から理解してもらえないことが多いため、孤独を感じる患者さんも少なくありません。

経過

MSは再発・寛解を繰り返し、一部、慢性的に進行する方もいます。

発症後の経過から「再発寛解型(RR)MS」と「一次性進行型(PP)MS」に大きく分けられます(図3)。
RRMSは再発と寛解を繰り返す型で、多くのMS患者さんがこの型です。RRMS患者さんの15%は、進行性の「二次性進行型(SP)MS」に移行します3。 一方、PPMSは進行性の型で、一部の患者さんがこの型です。
MSでは、繰り返す再発や障害の蓄積・進行を抑えることが重要です。

図3: MSの経過:病型別(イメージ図)

MSの経過:病型別(イメージ図)

Footnotes

  1. 難病情報センターホームページ(2024年4月現在) 2 3

  2. 多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023. p. 4-6.

  3. Houzen H et al. Mult Scler Relat Disord. 2023; 73: 104696.